TOPスタッフ日記【都立中】数学と世界史の意外な共通点

2024年04月23日 火曜日 【都立中】数学と世界史の意外な共通点     ( スタッフ日記 )

苦手とする人が多い教科の筆頭格は数学であろう。

最近は英語に苦戦する人も多いようだが、これは特殊要因があると考えているので今回のテーマでは扱わない。別の機会に詳しく述べたいが、少しだけ説明しておくと、

英語が苦手になってしまう人が増えた理由や原因は、学習指導要領の改訂に伴って学校現場において教授法が混乱したことと、便乗した民間英語教室や民間英会話教室がその混乱を助長したためであって、英語そのものにも、英語を学ぶ生徒の側にも、責任はないと考えている。

さて、数学の抱える問題点は、高校数学で説明すると、実は数学には分野があるのだが、それを学習指導要領上の都合で、分野を超えてそれぞれの教科書に割り振っている点にある。

例えば、高校数学で学ぶ確率統計分野は、数学1と数学2と数学Aの3つの教科書に分けられ、2つの学年にまたがって学び、その間に違う分野も学ぶため、一貫して、かつ、連続して、確率統計分野を学ぶことができない。

代数学
幾何学
解析学
確率統計学

教科書通りに学べば、何度も中断を繰り返しながら、分野を行ったり来たりしながら学ぶことになり、効果も効率も怪しくなる。すべて学び終えるまで高校数学の全体像は見えない。その途中で細切れになった分野ごとに演習を繰り返すことになる。

代数は得意だが幾何は得意ではない人が、数学全般を得意ではないと感じても不思議ではない。1つでも分からないと、数学は分からないと感じることになりかねない。

三角比・三角関数は幾何と解析にまたがった分野のため、苦手意識を持つ人が多くなりがちである。

世界史にも同様の課題がある。

世界史の教科書では次のように地域で分けて、大きな時代で区切って、行ったり来たりしながら学ぶ。この点で数学と同じ障害が起きる。

西ヨーロッパ・中央ヨーロッパ
東ヨーロッパ・東南ヨーロッパ

西アジア・中央アジア
東アジア・北アジア
東南アジア
南アジア

アフリカ

南北アメリカ・オセアニア

世界史は教科書は1つなのに、何度も中断を繰り返しながら、地域を行ったり来たりする。

すべて学び終えるまで高校世界史の全体像は見えない。縦のつながりを学び終えないまま、横のつながりをしっかり学ばないまま、妙な切り口で分けられた世界の歴史を学ぶことになる。

よって、数学も世界史も、ある日突然に分からなくなる。全てを学び終えないままで、分からなくなる。

新設された歴史総合でも同じことが起きる。世界史から見ると地域として日本史が新たに加わることになるし、日本史からすると新たに世界史(ヨーロッパ、北米、アジア、世界秩序、国際社会)が新たに加わるので、世界史学習者も日本史学習者も、これまで以上に挫折しやすくなる。

数学では、数学1・数学2・数学3・数学A・数学B・数学Cという分け方ではなく、代数学、幾何学、解析学、確率統計学という分け方があってもよいのではないか。

大学数学(大学教養課程数学)では、線形代数学(代数・幾何)、微積分学(解析学)、統計学(統計学・確率論)という大きな分け方になっている。

世界史では、ヨーロッパ史、中国・東北アジア史、東南アジア史、南アジア史、中央アジア史、西アジア史、南北アメリカ・オセアニア史、アフリカ史、といった分け方があってもよいのではないか。

大学では西洋史と東洋史に大きく分かれ、それぞれ別学科であることが多い。

実は、世界史の参考書には、「国別世界史」や「地域別世界史」というものがいくつかあって、個人的にはとても学習しやすいと感じる。国別や地域別に通史を学び、その後に国や地域を統合して学ぶというスタイルである。国や地域ごとに近代化や民主化のタイミングが違うから、この方が混乱が少なくなる。

高校数学と高校世界史の共通した課題は、分野や領域を行ったり来たりしながら学ぶので、全てを学び終えないと全体像が見えないことにある。

学習者は自力で統合したり細分化したりして理解しなければならない。どこかで一瞬でも手を抜けば途中で分からなくなり、その状態で全体を学び終えても全体は仕上がらない。

そもそも全体を学び終えないと全体像が見えないのなら、分野や地域ごとにしっかり学ぶ方が、学びやすいのではないだろうか。

実は、難関大学の数学は分野統合的に出題されることが多い。典型的なのは東京大学の二次試験数学であり、純粋な不等式の問題と見せかけて不等式と図形の融合問題だったりする。東大数学の難しさの源泉はここにあり、何となにを組合わせれば解けるのかに気がつくまでに時間がかかる。予備校などが勧める難関大学向け網羅系参考書をいくつ探しても載っていないような問題が出題される。

自力で分野を超えた公式や定理の組合せを見出して、自力で解答方針を立て、正解をイメージしながら、解き始めなければならない。参考書の示す公式や定理の組合せは役に立たないことがほとんどだから、むしろ、個々の公式や定理の本質を深く理解し、ありとあらゆる組合せで運用できることを目指した方がよい。

解法パターン暗記は止めておいた方がよいと、何度も繰り返しお伝えしているのは、このためである。

難関私大の世界史も手ごわい。先日紹介した慶應義塾のウクライナに関する問題だが、問題文がウクライナの歴史を長々と語るので純粋にウクライナについて問われるのだろうと思い込むと足をすくわれる。ウクライナのルーツである北欧民族に関連させてイギリス史・フランス史(ノルマン・コンクエスト)に飛び、一時期この地域を支配したモンゴル系のキプチャック・ハン国に関した出題に移り、同じくヤケベェ朝ポーランドに関して飛び、クリミア戦争に関係してトルコ史が問われ、またウクライナに戻ってコサックに関係させてロシアについて問われ、続いて第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけての時期について問われ、その流れで原子力爆弾とソ連解体に関する問題になり、最後はアゼルバイジャンなどのカフカス地方に関する問題で大問が終わる。

受験生は、頭の中の知識や理解の引き出しをあちこち開けて対応しなければならず、大問1つを解き終わっただけで、竜巻で屋根を飛ばされた部屋のように、頭の中が散らかることになるだろう。

社会は暗記だなどと思っていると本番で後悔することになる。教科書や用語集や資料集(図説)を丸暗記しただけでは解けない。教科書や網羅系参考書とは全く違う切り口で歴史が問われるので、本質的に歴史が理解できていないと解けない。

慶應義塾世界史にも東大数学に通ずる難しさがある。学校や予備校のハイレベルな授業が分かっただけで満足していたのでは解けないのである。難関大学が難関たるゆえんでもある。

物理や化学や生物や地学や、地理や政治経済や倫理は、数学や世界史ほどには、いろいろな分野の「大所帯」ではない。

数学と世界史は、学ぶ側に工夫や知恵や忍耐や継続力が求められる教科であり科目なのである。

数学や世界史は、教科書や学習指導要領がもう少し改善されても、よいのではないだろうか。

いや、難関大学を本気で目指している受験生や、難関大学に向けた受験指導に本気で取り組んでいる指導者からすると、むしろ、改善されない方が、ありがたいのかもしれない。


<お知らせ1>
・「完全無料!受験よろず相談会!」を実施します。

*詳細はトップページからご確認ください。
*今後は『有料化』を予定しています。

<おしらせ2>
・久々に「都立中チャレンジコース」による募集をします。

*今年度は初めて小6も募集対象にします。
*詳細はトップページからご確認ください。

<おしらせ3>
・「資料請求」と「お問い合わせ」はご遠慮いただいております。


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