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2017年11月21日 火曜日 都立中という幻想     ( スタッフ日記 )

都立中受検に大きな受験市場はありえないと書いた。

もう少し平易に説明しよう。

東京都の小6生徒人数:約94,000人
東京都の私立中学定員:約34,000人
東京都の都立中学定員:  1,440人

*立川国際と白鴎の帰国子女枠、小石川と白鴎の特別枠を含み、九段の都民枠を除く。

私立中学定員割合:36.2%
都立中学定員割合: 1.5%

東京全体で小学生の約3分の1以上が進学可能な私立中学に比べ、1.5%しか進めない都立中の定員は著しく少ない。約65人に1人しか進めない。これだけでも、誰もが志望することはふさわしくないことが分かるはずだ。

ところが、港区内のある小学校では、2クラス約70人の6年生のうち、今春に約15人がある1つの都立中受検を予定しているらしいというのだ。昨年、別のある港区立小学校では、2クラス約60人の6年生のうち約10人が九段を含む都立中を受検した。合格者は1名のみであった。当塾の生徒である。

いったい何が起きているのか?

以前、都立中の高倍率は、合格可能性のない児童を都立中受検に引きずりこむ塾の存在と、考えの甘い保護者の存在が理由だと書いた。受験に関する情報の偏在を踏まえれば、都立中受検に引きずり込む塾の存在が、そもそもの原因であることは容易に想像できよう。考えの甘い保護者もまた、実態を知らない受検生と同じ被害者なのだ。

東京都の小6生徒人数:約94,000人
東京都の都立中学定員:  1,440人
単純倍率:65倍

都立中受検、それは限られた児童にしか合格できない狭き門だ。ところが、小学校の成績が中位や下位の児童による受検が後を絶たない。

絶対評価で3段階評価の時代だ。「もう少し」は「及第点」とは言えず、旧制大学なら単位がもらえない「不可」相当だ。よって「もう少し」は1つでもあれば、かなりの学力下位だと考えられる。男女差もかなりあるが、「よくできる」が50%未満は学力下位と考えた方が安全だ。

「よくできる」が50%未満 → みなし「学力下位」
「よくできる」が50%以上 → みなし「学力中位」
「よくできる」が80%以上 → みなし「学力上位」

「みなし」としたのは、公立小学校における評定は「学力」だけで決まらないからだ。「意欲、関心、態度」が約50%をしめている。ただし、学力と「意欲、関心、態度」には相関があるから、「よくできる」の比率と学力の関係には相関があると考えて間違いはないだろう。

しかし、「よくできる」が80%以上であっても、模擬試験で平均程度(偏差値50程度)というのはなんら珍しくないので、過信は避けたいところだ。むしろ、「よくできる」が少ないほど(「できる」や「もう少し」が多いほど)、抱える問題の重篤性が高くなるという意味での目安には使える。

学力中位以下での都立中合格は難しい。学力上位でも容易ではない。なにしろ、全小学生の1.5%しか定員はないからだ。そこへ、毎年約10,000人の都立中受検生が挑戦する。徐々に受検者数が減少してきているとは言え、まだ概数としては約10,000人だ。

やはり不自然だ。歪んでいるとしか思えない。

そもそも合格を目指して指導するなら、学習塾全体として約10,000人の受検生を預かるのは詐欺に近い。しかも、受検生全体の総数は、特定の塾に集中しているから、もっと胡散臭い。

合格を目指して指導するなら、引き受ける受検生はもっと少なくなるはずだ。受検倍率約3倍、都内の塾全体で約4,500人以下が適性な水準ではないだろうか。

ところが、大手都立中受験塾も、そこへ通う児童も、そこへ通わせる保護者も、何の屈託もない。大手都立中受験塾は、受検生総数が頭打ちになっているにもかかわらず、出店(新教室開設)攻勢を緩める気配はない。

いったい、なぜか?

学習塾業界として最も市場の大きいのが高校受験市場だ。営利最優先に考える大手塾にとって、都立中残念組は、そのまま高校受験市場のサカナになる。だから、合格しそうにない受検生をどんどん入塾させておくことは、将来のメシの種を早期に確保することになるので、営利優先の観点からはなんの躊躇もいらない。

母集団を大きくすれば、合格者数を大きく見せることができる。これで低い合格率を目立たなくできる。つまり、都立中受験専門塾の本当の姿は、高校受験塾なのだ。当然に、都立中受験専門塾に通う受検生は、そのほとんどが高校受験生になることを余儀なくされる。

一粒で二度おいしい。都立中受験塾の戦略は、経営戦略的としては優れている。都立中受験塾の仮面をかぶった高校受験塾の業績は好調らしい。

大手都立中受験塾は確信犯だろうから当たり前だとしても、児童や保護者の心の内がよくわからない。

私立中を受験する狭義の中学受験生は、私立中学合格という目標があるから必然的に学習する動機がある。しかし、狭義の中学受験生以外は、将来の高校受験生だから、小学校段階で明確な学習動機を持ちづらい。

そこで、都立中受検という選択肢が急浮上する。都立中合格を目標に動機づけしようということなのではないだろうか。

しかし、都立中は適性検査型の試験である。小学校の学習内容を超えないとしながら、小学校の教科内容とは全く趣の違う試験となっている。漢字や計算、理科や社会の知識をそのまま問われることはない。問題解決型の作問になっているから、それ相応の対策が必要になる。しかし、そこが厄介で、問題解決型の作問に対応する準備をしても学力はつかないが、都立中を突破できるのは、やはり学力上位層なのだ。

いくら適性検査型の学習をしても、それだけでは都立中に合格できないばかりか、学力がつかないので、将来の高校受験にも役立たない。つまり、都立中受検を学習動機に利用しても、的外れな動機づけでしかないということだ。

中学受験を学習動機にしようというなら、まだ中堅私立中学の方が的を得ている。適性検査型ではなく、学力試験型の私立中が良い。中学での学習内容も先取りすることになるから、高校受験に向けた準備にもなる。

学費が心配なら、特待が取れなかった場合は、合格しても地元公立中学へ進むと、あらかじめ決めておけばよい。都立中に不合格になって地元公立中学に進むよりも、それなりの中堅私立に一般合格して地元公立中学に進む方が、それなりの達成感があってすがすがしいのではないか。

都立中を受検することは誰にでもできるから、都立中を受検したこと自体は何の成果の証にもならない。不合格となれば、もっと証にならない。むしろ学力不足の証となるだけだ。

都立中受検で失敗した人の多くは、高校受験でも失敗する。

都立中受検と、高校受験、それぞれの本質を見極めないと、失敗を繰り返すことになる。

そもそも、未知なるものへの興味、学ぶことの楽しさ、成長の喜び、自己実現への意欲、などといったものがなければ、勉学はモノにならない。

どんな入試であっても「真の学力」こそが身を助けることに変わりはない。

本質を見極めないと、広告宣伝に踊らされ、喪失感を味わうだけだ。

 

 

三田学院

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