TOPスタッフ日記やっても・できない・子(YDK)はなぜ増える

2017年05月25日 木曜日 やっても・できない・子(YDK)はなぜ増える     ( スタッフ日記 )

学力低下が危惧されて久しい。

しかし、学力底上げのさまざまな取り組みは成果を上げていない。むしろ学力格差は拡大が続いている。なぜなら、その殆どが、的外れな対策になっているからだ。

まず、なぜ低学力層が増加しているのかの調査・研究がいまだ不十分だ。というより分析結果の解釈の的が外れている。

貧困層ではない子供たちに、学力不振が広がっているのだ。貧困層の学力不振より深刻な事態ではないか。貧困が学力不振の原因だというなら、貧困対策が有効に機能するはずだ。しかし実態はそうなっていない。絶対的貧困層や相対的貧困層以外、つまり、中間層だけでなく富裕層や準富裕層にも学力不振は広がっている。学力不振の真の原因は、実は貧困とは違うところにあると見るのが科学的態度ではないのか。

生活インフラの劇的な向上で、何の努力をしなくても豊かな暮らしができる子がほとんどになった。とにかく小銭さえあれば、何でも手に入り、その場をしのげる時代だ。

そうした子供たちは、努力して知恵を身につけたり、勉学に励んで現状を改善していこうという意欲が湧きにくい。

江戸時代などの飢饉や、戦後直後の焼け野原の惨状は、本や映像の中の出来事でしかなく、まったくリアリティがない。つまり、努力しなくても、ほぼ誰でも生きていける環境が目の前に存在している。

だらしない親でも、そのほとんどは食うに困らない時代だ。勉強しなくても、だらしなく学校生活を送っても、将来困るということはないと感じ取る。

どうして勉強しないといけないのですか?

などという愚問を平気で口にできる子供たちが増殖している。

愚かな親は、なぜ勉強しないといけないのか、という問いに適切に回答できない。どこかで誰かが言っているようなことを回答しても、親の生きざまが裏づけになっていないと、賢くない子供であっても、それがまやかしだとすぐに見抜いてしまう。

だらしがない親は、わが子の向学心や向上心を育むことができないまま、わが子を学力格差の中に放り込んでしまう。

いつのまにか、わが子は、自分のことを「やっても・できない・子」(以下「YDK」と呼ぶ)と認識しだす。だからといって、将来困ることもなさそうだという楽観的な気分だけは続く。ただ学習意欲だけはドンドン低下していく。それが学力低下につながり、学力格差から抜け出せなくなってしまう。時を経るごとに事態は深刻になっていく。格差が広がっていくのだ。

「やっても・できない・子(YDK)」にしないためには、幼少期からの適切で継続した取り組みが必要である。この日記でも何度も書いてきたことだ。小4になると学力格差は鮮明になる。そして、この頃になると容易に学力格差は解消できない。小5以降はもっと難しくなっていく。むしろ、YDKがドンドン増殖していく。

学力不振が気になりだす小学校高学年になって慌てたり、高校受験で入れそうな高校を知ってから慌てたりすると、それを見越した悪徳業者の餌食となりかねない。

悪徳業者は、もはや手遅れとなった学力不振の児童や生徒を喜んで引き受ける。学力向上の真似事だけさせて、児童生徒や保護者の不安を低減させ、その対価をむしり取る。YDKの増加で業績は絶好調だと聞く。教育学的には深刻な事態だが、利用者が満足し業績好調が雇用や設備投資を生むので社会科学的には何ら問題視されない

根本的な治療を施すわけではないので、痛み止めをドンドン処方しながら通塾継続させる。高校受験が終われば、自ずと退院もしくは通院停止となるので、それまではドンドン慰安行為を継続する。

実は何ら学力が向上していないことに気がついたとき、笑顔で「さとうなら」と言われ、ハッとわれに返る。しかし、すかさず「あなたの努力を忘れない」などと美辞麗句で背中を押され、施設の外に送り出される。実は、この言葉は、合格しないことを前提に指導して大量に不合格を輩出する別の学習塾で得意とする文句のようだ。どうして、自分が、わが子が、なぜこんな状況になってしまったのか、訳がわからないまま、格差社会へデビューしていく

学力格差社会は、どのようにして生まれるのか?

やっても・できない・子(YDK)は、どうして増殖し続けるのか?

もうお分かりだろう。

かつて、勉学に励んだ先には明るい未来があるということが共通認識としてあった。

ところが、学歴(大学実質全入時代の現在は「学校歴」)の不足する保護者は、戦前や高度経済成長期の頃ように、もはや家が貧しくて学校に行けなかった、という言い訳はどこにも通用しないから、わが子に対して説得力がない。

また、学力が不足し、成功体験がない保護者は、わが子の幼児期から小学校低学年の黄金時代に、知的好奇心の大切さや、学力獲得の基本を、身をもって示すことができない。

加えて、欧米先進国や多くの発展途上国に比べて日本の状況は遥かににマイルドなのだが、学校歴社会の存在感が大きすぎ、勉学の先の明るい未来を示せないのだ。

こうした家庭の子弟で、低い学習意欲や学力不振が深刻なのだ。

学力(学校歴)の世襲が、貧困の世襲につながっているのだ。

回帰分析や多変量解析といった統計解析は、関係性はあぶりだせても、因果関係はあぶりだすことができない。

×:貧困→低学力
〇:低学力→貧困

連鎖しているのは貧困ではない。連鎖しているのは学力(学校歴)なのだ。それが貧困の連鎖に見えているだけではないか。

そして、こうした子弟を食いものにするオレオレ塾の存在が、事態の悪化に拍車をかけているのだ。

*統計解析では数値化しやすい学歴(就学年数)を説明変数として使用することが多い。しかし、これでは高難易度の大学卒業者と、実質無試験合格で入学できる大学が同じ扱いになってしまう。そこで、研究者の方々には、学校歴を数値化(ダミー変数化)してみてはいかがだろうかと提案したい。結論(都合の良い政策目標)ありきの研究論文を書いていないと信じたい。

*「大学を出てもまともな就職先が見つからないから、大学に行っても意味はない」などと豪語している人は、難関大学の出身者には珍しい。

 

 

三田学院

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